●
●
●
●
●
こんな インド人は イヤだ!!
第一幕
第二幕
第三幕
第四幕
第五幕
第六幕 第七幕 第八幕 第九幕 第十幕 第十一幕 第十二幕 第十三幕 第十四幕 第十五幕 第十六幕 第十七幕
●
●
●
●
●
☆ 最大化推奨
☆ リンクフリー
●
●
●
●
●
|
Traveling to India
第十三幕
こんなインドのタクシードライバーはイヤだ!
|
ヴァラナシに四日滞在したミネたちは再び長距離列車に揺られ、アグラ駅に降り立った。アグラと言えばタージ・マハルの町である。歴史の教科書などでその壮麗な姿を見たことがあるという方も多いだろう。ムガル帝国全盛期の王、シャージャハンがお妃様のために建てた墓である。その美しさを見るために何度もインドを訪れる観光客も多いと聞いている。
アグラの町に着いたのは朝八時。ヴァラナシで他の観光客から情報収集をしていて、屋上からタージが拝めるというあるいい宿のことを聞いていたので、駅でタクシーを捕まえてまっすぐにその宿へ向かった。
たどり着いた宿はうわさに聞いたとおりのいい宿で、タージが見られたのは勿論、日本語堪能のスタッフがいて、満足したミネたちはそこに泊まることに決めた。宿泊の手続きを済ませて部屋まで荷物を運ぼうとしたが、ふと見るとミネたちを連れてきてくれたタクシードライバーが手招きをして呼んでいる。どうしたのだろう、代金はすでに払ったはずだが。
ド「(やぁ君たち。今日のこの後の予定は?)」
ミ「(一休みしてから観光しようと思う。)」
ド「(なぁどうだい?私を一日雇わないか?アグラの観光地を連れて回ってあげるよ。)」
ミ「よぉ相棒、どうする?」
相「高いんじゃない?タージまでもそんなに遠くないし、歩いて回ろうぜ。)」
ミ「でも少し疲れてない?値切ってみようぜ。」
相「お前がそうしたいならいいぜ。一人50ルピーくらいまでになったら雇おうか。」
ミ「そうしようか」
ド「(友達と相談は終わったかい?どうだい?一人100ルピーでいいよ。)」
ミ「(高い!一人50なら雇う。」
ド「(OK!君たちがその値段がいいならそうしよう。昼頃迎えに来るよ)」
えらく簡単に値切れた。インドに来てこんなことは初めてだった。相棒と、もう少しふっかければよかったな、などと笑っていたが、うまい話には裏があるもので・・・。
一休みして十二時を回ったころ、宿に迎えに来たタクシーにミネたちは乗り込み、まずはアグラでタージ・マハルと並んで有名な名所、アグラ城というところに行った。これは古い要塞であり、その迷路のようなお城の中で一時間半ほど楽しんだ後タクシーへ戻った。
ド「(楽しんだかい?)」
ミ「(ああ。次は川の対岸にある宮殿に行くんだよな?)」
ド「(それがな、この時間には橋は交通規制をしていて向こう岸には渡れないんだ。でもアグラは素晴らしい手工業の町でもあるんだ。これからその工房にいくつか連れて行ってやる。)」
連れて来られたのは工房とは名ばかりの土産物屋だった。
ミ「おい、怪しくなってきたぞ。」
相「ああ、もしかしたら土産物屋を次々と連れ回すんじゃないか?」
ミ「ああいうタクシーって店に客を連れて行くだけで金がもらえるんだろ?その可能性は高いな。)」
相「でもさ、俺たちが何も買わなきゃ損することはないだろだろ?どうせアグラ滞在は長いし。」
ミ「・・・おちょくってあげますか!」
最初の店は大理石工芸の店だった。
店主「(いらっしゃいませ。何をお探しで?)」
ミ「(いや、何も探してない。絶対に何も買わない。)」
店主「(・・・帰れ!)」
次の店は絨毯の店だった。
店主「(この絨毯を買って日本に持って帰って売れば、2・3倍の値が付きますよ。)」
相「(じゃ、お前が日本に持って行って儲けろ、バカ!)」
店主「(・・・帰れ!)」
次は普通の土産物屋だった。すでに手工芸ということも無視されている。
ミ「(ありがとう。いろいろと面白いものが見られたよ。)」
店主「(でも、何も買わなかったじゃないか!)」
ミ「(いやいや、ありがとう。楽しかったよ。)」
店主「(二度と来るな!)」
こうしてミネたちは6・7件ほどの店を連れまわされた後、ホテルへと帰ってきた、一切何も買わずに。
それにしてもタクシードライバーが、
ミネたちが何も買わずに店を出てくる度、
しきりに汗をぬぐっていたのは、
インドの暑さのせいですよね?
もう二度とあんな客連れてくるな、と店主たちに怒られるなんてことがなかったように祈るばかりです。
|
第十四幕
こんなインドの自転車はイヤだ!
|
第三章でカルカッタのリキシャについて紹介した。そのときカルカッタ以外では禁止されているということにも触れたが、他の都市では代りにサイクルリキシャというものがある。人力車に似ている構造はリキシャと同じであるが、座席の前にはその名のとおり自転車が付いていてこぎ手がこいでくれる、という乗り物である。
アグラは北インド第一と言える位の観光地であるので、町中には外国人観光客を狙ったサイクルリキシャがとても多い。町を歩いていると十中八九話しかけられる。
印「(ハロー、日本人!乗る?)」
ミ「(これからすぐそこのホテルに帰るだけだ。近いから乗らないよ。)」
印「(そうか・・・。飯は食ったか?)」
ミ「(いや、まだだけど、この近くで自分で探すよ。)」
印「(いいレストランを知ってるよ。連れて行ってやるから乗らないか?)」
こういうサイクルリキシャのヤツはだいたいレストランと組んでいる。客を連れて行ったら、そのレストランから売上の何%かをもらえるというシステムである。リキシャ代もレストランからの謝礼も受け取れるので、こぎ手にとってはいい仕事である。そのためにこの手のヤツは大変しつこい。
ミ「(いや、いいよ。乗らない。)」
印「(・・・君は私を信用していないだろう?変なところに連れて行くとか、代金をボッたりするとか考えているだろう?確かにそんな悪いヤツも多いが、私は違う!今までに色んな日本人を乗せた。みんな私に感謝してくれた。これを見てくれ。)」
と言うと、そいつはポケットから手帳を取り出し、あるページを開くとミネに渡してきた。見ると日本語が書いてある。
なるほど。こいつは今までに乗せた日本人に頼んで、自分自身の推薦文を書いてもらっているわけだ。本人がいくら「美味いレストランに連れて行く」だとか「絶対にボッたりしない」だとか主張しても信用されるわけがない。しかし、日本語の推薦文を見せられると信用できる。こいつは日本語の読み書きができるわけがない。客が書いた文に間違いない。初めて見た手法だが、母国語が恋しい旅行者にはなかなか有効な手段である。どれどれ、どんなことがかいてあるだろうか・・・
「このおじさんはいい人そうに見えますが、頼んでもいないのに勝手に何件も土産物屋に連れて行きます。多分土産物屋とグルです。気を付けて下さい。
横浜 ○山○郎」
「このリキシャにレストランに連れて行かれましたが、味は微妙でした。しかも高めでした。止めた方がいいですよ。
25才 大学生」
「お前、チップの要求がしつこいんだよ!二度と乗らねぇよ、バーカ!」
ああ、かわいそうに・・・
みんな推薦文を書いてくれているとすっかり勘違いして、「私、悪い人です」とさらしまくっているおじさん。元気にサイクルリキシャ、続けているだろうか・・・
|
第十五幕
こんな日本人の旅行者はイヤだ!
|
アグラで泊まったホテルは屋上からタージ・マハルが一望できるというなかなかいいところであった。アグラ一日目の観光を終えたミネと相棒は町でビールを買い込み、その屋上から夕焼けに染まるタージ・マハルを見ながらのんびりしていた。
するとそこに男性の宿泊客がひとりやって来た。アジア系の顔立ち、おそらく日本人だが、日本人と思って話し掛けると韓国人だった、みたいな失敗は外国ではありがちなので注意が必要である。こういう場合は万全の注意を払って話し掛ける必要がある。
ミ「Where are you from?」
男「Japan!・・・日本人の方ですよね?」
良かった。日本人だ。相棒と二人で旅行しているとはいえ、やはり旅先で日本人と会うのは嬉しいものである。
男「僕は一人旅なんですよ。いやぁ、日本人と会うとなんかホッとしますねぇ。」
ミ「ええ。アグラへはいつ到着されたんですか?」
男「今日の昼に。デリーから列車で来ました。」
ミ「ああ、そうなんですか・・・」
ミネたちはインドの東に位置するカルカッタから入国して、北インドの観光地を巡りながら北上し、デリー空港から出国するプランである。このようなルートで旅する者も多いが、北インド観光の一番メジャーなルートはデリーから入り南下してカルカッタに出る、つまりミネたちとは全く逆のルートをとる順番である。この人もそのルートで旅行している最中であると教えてくれた。また彼もミネたちと同じ学生であり、夏休みを利用してやってきたことも話してくれた。
ミ「へぇ。僕らは明後日デリーへ向かうんですけど、どんな町でした?」
このように現地で日本人と会うことのいい所は、懐かしさを感じさせてくれることだけではない。別ルートで来た人からもらえる、これから訪れる町の情報はとても貴重なものである。
男「いやぁ、この町に比べるとかなりにぎやかですね。人も多いですよ。」
相「なんか旅行者を狙った詐欺みたいなのも多いと聞いてるんですけど?」
男「そうですか?二日いましたけど、そんなことはなかったですねぇ。大丈夫なんじゃないですか?」
ミ「それを聞いてちょっと安心しましたよ。ところで、これからどんな予定なんですか?」
男「はい。明日にはアグラを出てヴァラナシに行くんですよ。三日してからカルカッタに行って日本に帰ります。トータルで十日間の旅ですね。」
ミ「十日ですか。結構バタバタですね。」
男「そうですね。でも列車のチケットもホテルの予約もデリーで手配してきたんで。全部で400ドルで取れましたよ。」
・・・?
400ドル?ちょっと高くないか?
読者のみなさんのために整理しよう。この時点まででミネたちのインド滞在は18日間。かかったお金はというと列車、宿泊費、食費、お土産代など全て合わせて400ドルである。彼の話を聞くと、彼の払った400ドルの中には食事代は入っていない。さらにミネたちの列車のチケットはエアコン付きの車両のものなのだが、彼のものは半分以下の価格で手に入るエアコン無しの車両のものである。
・・・おかしい。どう考えてもおかしい。
ミ「ほぉ・・・、デリーで全て手配してしまったんですね?失礼ですが、どんな感じで予約されたんですか?」
男「はい。デリーには外国人専用の列車チケット予約オフィスがあるんですよ。それで、デリーに着いた次の日にそこへ行ったんです。そしたら、入り口のところにガタイのいいインド人が立っててですね、『今日はオフィスは休みだ』って言うんです。デリー滞在もそんなに長くないんで、一刻も早くチケット取りたかったんですよ。で、弱ったなぁと思ってたらそのインド人が『俺の知り合いに旅行社をやってる友達がいるから連れて行ってやる』って言ってきたんですよ。こりゃ助かった、と思ってですね、そのインド人に連れて行ってもらったところで手配してもらったんです。いやぁ、一事はどうなることかと思いましたが、助かりました。ははは。」
読者のみなさんに説明しよう。これ、ガイドブックを見れば絶対に載っている、インドで一番と言っていいほど有名な詐欺の手口。彼、自分がボラレたことに全く気が付いていないのだ。
インドは旅行者を狙う詐欺師が多く、治安はあまり良くないことは知られている。インドに来ようと思ったら、絶対にこの手の詐欺は綿密に下調べしてから出発するものである。しかし、頭では分かっていても次から次へと迫ってくる魔の手にパニックになってしまって結局騙されてしまった、という話もまたよく聞く。
彼もそのような感じだったのだろうか。もしホントに気が付いていないのなら、わざわざ「あなた、騙されてますよ。」と言うのも気の毒である。どうしようか・・・。彼の気を悪くしないのが思いやりか、それとも今後のために教えてあげるのこそ思いやりか・・・。
ミネが迷っていると、彼が話を切り出してきた。ミネがいつも持ち歩いているガイドブックに目を付けたようだ。
男「へぇ・・・。ガイドブックとか、読むんですね。」
参った。真性だ。この彼、旅行前の下調べすらしていない・・・。
結局、彼には教えないことにした。彼自身は何も知らないことで旅行を楽しんでいるようだし、ボラレたからといって金には困っていない様子であったからだ。
彼にはこのままの生き方で突き進んでいただき、ぜひとも大物になって欲しいものだ。その前に、生きて日本に帰って来ているかも気になるところではあるが。
|
第十六幕⇒
↑To The Top↑
"Traveling to India" since 2003−10−01 Copyright Minet All Rights Reserved.
|
|
●
●
●
●
●
シャシンカン
●
●
●
●
●
I LOVE INDIA!!
●
●
●
●
●
|