こんな
インド人は
イヤだ!!


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Traveling to India


はじめに

私、ミネは2003年夏、インド旅行に行って参りました。
海外旅行には、行く前には予想もしなかった面白い体験、
あるいは思わぬ苦労や災難が付き物だと思います。
以下の文章は、ミネの旅行日誌の中からそのような出来事を抜き出し、
多少の脚色を加えて再構成した「ほぼ・ノンフィクション」です。
皆様に楽しく読んでいただければ幸いです。

2003年10月1日  ミネ


 
第一幕
こんなインド人はイヤだ!


 2003年8月7日、インド観光のいわゆる「オフシーズン」といわれる真夏に、ミネと相棒はカルカッタの地に降り立った。飛行機から降りた途端、殺人的な熱気と陽射しが僕らを出迎えてくれた。日本とは違う汗のかき方をしている自分にすぐ気付いた。
「この熱さじゃオフシーズンと言われるのも当然だ。」
まるで他人事のように、そう思った。
 カルカッタはインドの東に位置する大都市。インドで初めて地下鉄を通すなど近代的な町である。空港から僕らのような外国人旅行者が泊まる安宿街まではかなり距離があり、公共交通機関を使うのが一般的である。
 飛行機の中、ミネと相棒はその安宿街へ行く方法をガイドブックを片手に思案していた。

ミネ「タクシーにも流しをつかまえるのと先に料金を払って連れて行ってもらうのと二通りあるんだな?」
相棒「ああ。でもタクシー高くねぇ?空港近くにバス停があるって載ってるぞ。」
ミ「そうだな。どれくらいかかる?」
相「これには10ルピー程度って書いてある。」
ミ「タクシーは?」
相「180くらいだな。」
ミ「高いな!それじゃバスに決まりだな。」

 空港を出るとその前に四車線ほどの幅の道路が一本通っていて、客待ちのタクシーが何台も止まっている。建物らしきものは背後の空港以外ほとんど見えない。バス停らしきものも見えない。ミネは相棒と相談して、少し歩いてみようという事に決めた。ガイドブックを片手に方向を決め歩き出すと、一人のインド人が寄って来た。

インド人「(ハロー!日本人?どこ行くの?)」

 さすが旧英国領。流暢な英語で話しかけてくる。ミネは台湾とタイへ渡航経験があるが、そこでは外国人相手の商売人でさえ英語が話せないことがよくあった。やはり違うなぁ、なんてことを考えながら適当に相手をしてみることにした。

ミ「(サダルストリートまで。)」
印「(サダルね?どう?俺のタクシーに乗って行かない?)」

 予想はしていたが、やはりタクシーの客引きだ。

ミ「(いや、そこの相棒と一緒にバスで行くよ。)」
印「(それは無理だ!サダル行きのバスは今日休みだ。)」

 ほう。ここまで露骨に嘘をついてくるとは。

ミ「(それでもバス停を探してみる。)」

 ウザい運転手を追っ払った。間髪入れずに別のインド人が寄って来る。

印「(ハロー、日本人!タクシー乗らない?)」
ミ「(バスで行くよ。)」
印「(無理だよ。この近くにバス停なんて一つも無い。)」

 ほう。そう来ますか?でも同業者と口裏を合わせるくらいしておいたら?両方嘘つきってバレバレじゃん?

 こうして寄ってくる客引きを丁重に追っ払いながら、ミネと相棒は歩を進めた。しかし、行けども行けどもバス停は見付からない。おまけにこの暑さ、陽射し。ミネも相棒も歩きがだんだん鈍くなってくる。「バス停はこっちでいいのか?」と一言誰かに尋ねられればいいのだが、回りは客引きばかり、嘘を言うに決まってる。相棒と、こっちでいいのかと話し合いながら進むが、殺人的な熱気と不安いっぱいの心理状況も手伝って体力はドンドン奪われていく。
 そんな道すがら警官を見付ける。しかし、こんな状況で突発性のヘタレ症候群に陥っているミネは、インドの警官が肩からさげているライフルが必要以上におっかなく見えてしまって道を聞くことができない。別に何も悪いことはしていないのに。
 暑さ、陽射し、嘘つき、ライフル、どこまでも続きそうな道・・・。



 そしてミネと相棒は根負けした。

 嘘ついたの分かってるし、最初は威勢良く断ったし、本当にしゃくだったが、タクシーに乗ることに決めた。180ルピー=約五百円をケチろうとして歩き回った挙句の最悪の結果・・・。


 タクシーの中でガイドブックを見直すとこんな注意があった。

「真夏のインドで水を持たずに外に出るのは自殺行為です。」

 その通りだ。確かにこの暑さには参った。しかしミネはこの言葉の意味を、


「暑さで疲れ切ってしまって、
 善からぬインド人の言いなりにならないように。」


ということだろう、と思った。


 午後三時。予定よりも二時間ほどのロスをして、ミネと相棒は外国人向け安宿街、サダルストリートに到着した。
 インド一日目。前途は多難だ。  
 

 
第二幕
こんなインド時間はイヤだ!


 ミネと相棒はクラスメイト、部活も同じである。今回の旅行は、二年前にインド旅行をしたその部活の先輩の話に海外好きの相棒が感化され、ミネを誘ってくれたことで計画が立った。カルカッタから入りブッダが悟りを開いた菩提樹、ガンジス河、タージ・マハルなどの北インドの観光地を巡り、首都デリーからインドを出るという三週間の予定である。
 どうにかこうにかしてたどり着いたサダルストリートだが、先輩が泊まっていた宿に俺たちも泊まろうと決めていたので、宿選びはスムーズに済ませることができた。部屋のベッドに早速横になり、天井からぶら下がって音を立てながら回っているファンを見ながら空港での疲れを癒していると、隣で寝転がっていた相棒が言った。

相「列車の時刻表を買いに行かないとな。」

 そうなのだ。今回の旅行ではカルカッタを含めて五つの町を回り、その間は全て列車で移動することに決めていた。そして、カルカッタには外国人専用の予約窓口があること、そこではカルカッタ発のみならずインド全域の列車の予約ができること、やはり予約は早いほうが安心、という理由からチケット予約はこの町ですることも決めていた。

ミ「そうだな。まずは時刻表を手に入れないと何も分からんからな。」
相「俺、インド行ったことがある友達に聞いたんだけど、列車のチケット取るだけで丸一日かかったってさ。」
ミ「え?何でまたそんなに?」
相「インド人って大らかというか、時間にルーズなやつらだからじゃない?列車もしょっちゅう遅れるだろ?」
ミ「ああ、なるほど。俺も何かで読んだ。インドには『インド時間』っていうのがあって、日本より時間の流れがものすごく遅いけど、それにイライラしてたらインドは楽しめない、とか書いてあったな。」
相「だから何でも時間を余計に見積もっておかないとさ。というわけで、今から時刻表買いに行こう。」
ミ「え!?」

 何も疲れきった今行かなくても、と思ったが何が起こるかわからない、早めに行動しておけば確かに安心だ。ミネはいつもより重く感じる体を持ち上げて、相棒と宿を出た。

 サダルストリートのすぐ近くにニューマーケットという市場がある。紅茶、スパイスなどの定番のお土産から、衣服、食材、本などと品揃えは豊富で、現地人もよく利用するらしい。ミネと相棒はこの市場に目をつけた。本屋なら時刻表があるに違いない。サダルストリートを抜けマーケットが近くなると白髪、口ひげ、痩せ気味の初老のインド人が右手に大きめのざるを持って近寄ってきた。

印「(ハロー?どこ行くの?)」

 あやしい。空港で痛い目にあってインド人が嘘つきなのは知ってるが、それよりなによりそのざるは何だ!

ミ「(マーケット。)」
印「(おお!私マーケットのガイドしてます。何が欲しいの?)」
ミ「(それよりそのざるは何だ?)」
印「(これは貴方の買った物を私が持ってあげるための物です。ねぇ、何が欲しいの?)」

 なるほどね。でもそのままかっぱらって逃げるんじゃねぇだろうな?などと考えながら、時刻表のことを聞いてみることにした。

ミ「I want the time table for trains.」

 学校の時間割がタイム・テーブルだと習ったのを思い出して、とっさにこう言ってみた。通じるかなぁ、と思っていたら

印「(OK!ついて来い!)」

 おお!通じたぜ!やっぱり日本の受験英語も捨てたもんじゃないな、と満足しながら意気揚揚とついて行った。



 つれて行かれたのは時計屋だった。

 おい、コラ!お前「タイム」だけに反応してなに高額の買い物させようとしてるんじゃ!しかも、「それじゃ本屋に行きたい。」って言ったら「でもこの店いい物たくさんあるよ。見てってよ。」って、お前時計屋の回し者だろ?付き合ってられるか!


 結局そのインチキガイドを追っ払った後、マーケットの中で本屋をいくつか見付けるもそのいずれにも時刻表は無く、駅なら買えると言う本屋の店主を信じて、地下鉄で駅に向かうことにした。
 地下鉄に乗り込みホッと一息。思い浮かぶのはホテルでの相棒との会話。

 しかし『インド時間』って本当にあるもんだな。さっきだってバカなガイドにつかまって・・・ちょっと待てよ・・・


インド時間ってこういうことですか?
インド人の大らかさが原因なんじゃないんですか?



 そう信じよう、そう信じたいなどと今考えれば甘いことを考えながら、ミネと相棒は駅へ向かった。
 

 
第三幕
こんなインドの人力車はイヤだ!


 カルカッタには「リキシャ」と呼ばれる乗り物がある。大きな二つの車輪の上に二人が並んで座れるほどの席が乗っかっており、そこから前方に長く伸びた棒をお兄ちゃんやおっちゃんに引っ張ってもらって進むという、京都で舞妓さんが乗っている人力車と全く変わらない構造をしている。リキシャで移動する旅行者は勿論、早い時間帯には制服を着た学生がリキシャで通学する光景もよく見られ、カルカッタの町に溶け込んでいるのがよく分かる。しかしこのリキシャは、近年のインドでの乗用車の普及により共存が難しくなり、渋滞の原因となる、危険であるとのことでカルカッタ以外の都市ではすでに法により禁止されている。カルカッタもその流れを受けて、最近リキシャ免許の発行を中止した。つまり今のリキシャ引きが全て引退してしまうと、リキシャはインド全土から姿を消すことになる。すでにリキシャ引きは高齢の方が多く、消えるまで十年ほどだろうと言われている。
 地下鉄を降りたミネと相棒は迷っていた。目指すはハウラー駅。カルカッタ最大の駅である。最寄の地下鉄駅で降りたはいいが、歩くにはちと遠い。しかもそこまではハウラー橋という巨大な橋を渡って行かなければならない。
 少し悩んだ末、ミネと相棒はリキシャで行く選択をした。地下鉄を出るとリキシャ引きがたむろしていたので、すぐにつかまった。値段交渉をして、その中で一番安い提示をしたおじちゃんのリキシャに乗り込む。

 リキシャが走り出す。車の交通量の少ない裏道を通り、リキシャが行く。裏道とはいえ人通りは多い。おじちゃんは大きめの鈴のようなものをカラカラ鳴らし、独特の掛け声で人並みを掻き分けながら突き進む。後ろから見るおじちゃんは、さすがにたくましい体をしている。その白髪混じりの頭を見るに、五十足らずの年齢だろう。しかしそれを感じさせない走りでリキシャは進む。心地よい揺れと共にリキシャは進む。

 裏道を抜けると交通量が急に増えた。右手にはすぐそこにハウラー橋が見える。さあこれからこの橋を渡ろうかというときに、前方から車の騒音混じりにけたたましい叫び声が聞こえてきた。見ると警官がこちらに向かって叫んでいる。するとリキシャは急にUターンを始めた。おじちゃんに何事かと聞くと、困った顔をしながら「No、No。」と言うばかりである。どうやらカルカッタ市内でも一部の地域はリキシャ乗り入れ禁止のようだ。しぶしぶ逆の方向へトロトロと進むリキシャ。

ミ「こりゃ別の方法で行った方がいいかな?」
相「ああ。その方が・・・」

 その刹那、リキシャは再度Uターンをして猛スピードで走り出した。どうやらおじちゃん、警官が目を離すのを待ち構えていたらしい。

 ・・・おじちゃん・・・。捕まっても俺たち知らないよ・・・。

 しかし呆れるのもつかの間、リキシャはあっという間に橋の中ほどまで到達していた。
 橋の上はものすごい交通量だった。市街部と駅をつなぐ橋、それもそのはずである。行き交う車の中を縫うように進むリキシャの上、橋から見える風景に見とれていると、ふと肩をポーンとたたかれたような気がした。何だろうと思って振り返ると



 バスだった。

 走り去るバスを呆然と見送りながら、「危険で共存が難しい」というガイドブックの言葉を思い出した。


 こうしてミネと相棒は駅で時刻表を手に入れた。タクシーでサダルストリートまで帰ってきたころには日もとっぷりと暮れ、真っ暗になっていた。
 なかなか面白い体験をしたものだ、と少し満足した気持ちでさっきのリキシャのおじちゃんの顔を思い出しながらホテルまでの道を歩いてると、別のリキシャ引きが話しかけてきた。サダルにもリキシャはいるのである。

リキシャ引き「ハロー、ジャパニーズ!リキシャ?」

 ホテルはもうすぐそこだ。ごめんね、乗らないよ。

ミ「ノー。ノー・サンキュー。」
リ「ソー、ハッパ、ハッパ?」


 お前ら、麻薬売りが副業なのか!?
 なんでハッパなんて日本語覚えてんだよ!?



 そのリキシャ引きを追っ払い、「そりゃ廃止されるかもなぁ」などと考えながら、インド一日目の夜は更けていった。
 

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"Traveling to India" since 2003−10−01
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