2003年11月〜
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11/4
シックス・センス
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男「ギリシャ神話の、神様が世界のへそを決める話、知ってる?」
女「何それ?」
男「ゼウスって一番えらい神様がね、鷲を二羽放してね、その二羽が会ったところを世界のへそだって決めたっていう話でさ、へその遺跡ってのも残ってるらしい。」
女「ふーん、初めて聞いた。」
男「不思議だと思わない?」
女「どこが?」
男「その頃の人々の世界観と言えば円盤でしょ?世界は平らな円盤で、その上に自分たちは住んでいて、世界の果てにはでっかい滝が落ち込んでいるっていう。でも世界が円盤ならさ、神はわざわざ中心なんて決める必要なんてないんだよ。円なんだもん。」
女「で、どこが不思議なの?」
男「だからさ、その頃の人々が世界は円盤だと言いながらそんな神話を作ったってことはさ、世界が中心をわざわざ決めなければならない形、つまり球だってことを薄々感じてたってことじゃないかな?」
女「はぁ、そういうことね。」
男「どうして分かったんだろうって不思議にならない?」
女「第六感ってやつじゃない?人間てさ、何となくだけど真実を嗅ぎ分けるみたいな、そういう力あると思う。私そういうの信じる方。」
男「そう?俺はそういうのはちょっと信じないなぁ。」
女「ところでさ。」
男「何?」
女「最近なんか変だよね?何か隠し事してるでしょ?」
男「・・・いや。」
女「浮気してるでしょ?」
男「・・・うん。」
女「部屋に連れ込んだりしてるでしょ?」
男「・・・うん。」
女「エッチもしたでしょ?」
男「・・・うん。」
女「誰?私の知ってる娘でしょ?」
男「・・・お前の友達のエリちゃん・・・。」
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11/11
国民的議論
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「・・・今回の総選挙の結果を見て思った。このままではこの国は二大政党制に向かっていく。しかし個々人の価値観の多様化が叫ばれる現代、様々な要望をたった二党で全て汲み取れると思うか?」
「いや、それは私はよく分からない。」
「特に私が危惧するのは改憲の問題だ。今度の選挙で第一党、第二党となったのはいずれも改憲を主張する政党だ。イラクへの自衛隊派遣が大問題だったはずなのに、マスコミの情報操作も手伝って重要な争点とはならなかった。平和憲法は改正されてしまう。日本に再び軍国主義の暗黒時代が訪れてしまう。」
「それは少し考えすぎなのではないか?」
「そんな事はない!何故そんなにのん気でいられるのか不思議だ。憲法という大きな歯止めが無くなってしまったらどうなってしまうか、君は考えたことがあるのかね?君も平和がいいだろう?」
「確かに私も平和は望んでいるが。」
「そうだろう?こんな今だからこそ、私たちは恒久の平和を広く訴えなければならないと思う。今すぐにでも総理に言っておきたいくらいだ。」
「はぁ・・・。」
「回りを傷つけて何になる?他人を恐怖に落とし入れて何になる?みんな心の根底では絶対に平和を望んでいるはずなんだ。私は平和を訴える。そして、この国の全員がこの問題についてもう一度よく考えてほしい、と思うわけなんだよ。」
「分かった。お前の言うことは分かったから、とりあえず包丁を放しなさい。」
「・・・はい、立てこもり現場から中継です。犯人は20代前半と思われる男性ひとりで、10人を人質に立てこもっております。県警によりますと、犯人は『総理大臣に会わせろ』と要求、また『私の考えを国民に知って欲しい』とも言っているとのことです。現在は説得による人質解放を試みていますが、人質には女性や小学生の子どもも含まれており、その安否が心配されます。一旦スタジオにお返しします・・・」
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11/14
「どうする?」 「私、踊る!」
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パシャッ!パシャパシャッ!
「ティッシュ配りのやりがいは何ですか?」
「・・・真心で配ると誠意が伝わる気がします。」
「ア○ムのCMでブレイクした小野真弓さんをどう思いますか?」
「・・・うらやましいです。私も早く売れたい。」
「アイ○ルのCMのチワワのクゥちゃんは?」
「・・・犬のくせに、私よりも有名だなんて。」
「プロ○スは井上和香を起用しましたが?」
「放っておいてよ!負けないわよ!あんな新米なんかに!」
「頑張ってね!!」
「あなたたちもね(泣)」
売り出し戦略は計画的に。
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11/18
25歳、フライトアテンダント、勤務歴3年の場合
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「お客様!
起きて下さい、お客様!
目的地に到着いたしました、お客様。
当機は一時間十五分の順調なフライトを終え、
無事羽田空港に到着いたしました。
お客様、起きて下さいませ。
私がいけないのは分かっております、お客様。
お客様が機内サービスのビールの5本目を要求された時点で、
こうなることを予測しておくべきでございました。
どう考えても1.75リットルは飲みすぎでございます、お客様。
尿意の一つくらい、もよおしやがれ、お客様。
ああ、起きて下さいませ、お客様。
エコノミー・クラスのくせにくつろぎすぎです。
このままではタカハラになってしまいます、お客様。
遠い異国の地でドイツ人に取り囲まれ、
「スシ・ボンバー、スシ・ボンバー」と罵声を浴びせられる、
そんな状況にお客様は耐えられますか?
しかしながらお客様、分かる気もいたします。
思慮深さのかけらも感じさせない飲みっぷり、そして酔いっぷり。
察するに何か嫌なことがあったのですね?
ベタにリストラされましたか?
ベタに娘が一緒にお風呂に入ってくれませんか?
ベタベタに武蔵丸の引退ですか?
・・・あっ、別にどうでもいいですか。
これは失礼いたしました、お客様。
でもこれで俄然楽しみになってきましたよね、お客様。
元横綱同士がコンビを組んで、年末にM−1の舞台へ!
・・・お客様?
ここ、ツッコむところです、お客様。
これ以上のチャンスはあまりお目にかかりませんよ、お客様!
一思いに「K−1だろ!」と切り捨ててやってください!
このままお客様が応えてくれずに淋しくなると、
スッチーは死んじゃうんですよ、お客様。
そしてお客様がこのまま起きないと、
スッチーは減給処分なんですよ、お客様!
ああ起きてください、お客様!
さっきは微妙に起きてたじゃないですか、お客様。
お客様、二度寝はしないでください、公共交通機関で。
お客様、それではよくお聞きください。
ご存知のように飛行機は厳格なスケジュールで運行しております。
今この瞬間にも何千、何万という飛行機が、
世界中の空を運行しているのです、お客様。
お客様ひとりのせいでその正確なフライト・スケジュールが乱れ、
また私のアフター・ファイブのスケジュールも乱れてしまうのです。
・・・お客様?
ここ、ツッコむところです、お客様。
今日二度目の大チャンスです、お客様。
絶対に拾うべきところです、お客様。
お客様は男性からの人気職業ナンバー1のスッチーのこの私が、
今晩どんな男に抱かれるのか気にならないのですか?
今晩私が誰にツッコまれるのか、
ツッコまないのですか、お客様!
お客様!
起きてください、お客様!・・・」
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11/25
美容師
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「こんにちは。本日担当させていただきます、宮原と申します。よろしくお願いします。今日はどのような感じにいたしますか?」
どのような感じ?参ったなぁ、最近の流行なんて知らないしなぁ。とりあえず髪伸びすぎてウザったくなったから髪切りに来たんだけど・・・来る店間違ったかなぁ。東京まだよく分からないし、近いトコに来てみたけど・・・こんなトコだなんてなぁ。
「とりあえず伸びすぎてウザいんで・・・こう・・・サッパリと・・・」
「はぁ、別にこだわりとかはないんですね?かしこまりました。それではこちらに。一回お流しします。」
こだわり?そういえば俺、そんなものないよなぁ・・・。ホントによく分からないもんなぁ。予備校行って、寮帰って飯食って、ちょっと勉強して寝るだけ。雑誌なんて最近は読まなくなったもんなぁ。今日髪切りに来たのだって、全然気にしてなかったけど気が付いたら髪伸びてたから、って感じだしな。
「それじゃ、始めますね。・・・お客様、どうやって当店をお知りになったんですか?」
友達の紹介、かなぁ・・・。俺はそんな風には思ってないけど。高校が同じだったってだけでアイツ何かと話しかけて来るんだよな。アイツは人当たりがいいから、予備校でも友達作って上手くやってるみたいだけど、その神経が分からん。大学に合格できなかった負け犬同士で傷を舐めあって何が楽しいんだ?予備校で友達作って楽しくやるなんて、どうかしてる。
「ああ、友達が教えてくれて。」
「そうでしたか、ありがとうございます。それにしても随分伸びてますねぇ。髪切るのどれくらいぶりですか?」
どれくらいかなぁ・・・覚えてないなぁ。そんなこと気にする気力もなかったしなぁ。
「ちょっと・・・覚えてないですねぇ。」
「そうですか。でも見た感じだと半年は切ってないんじゃないですか?ダメですよ、お客さん。身だしなみには気をつけないと。」
まぁ確かにそうなんだが、そんなこと気にしても俺にはあまり意味ないし・・・。予備校でも友達はいないし、みんなも俺のことを付き合い悪くてよく分からないヤツだって陰口叩いてる。いいんだよ、俺はこれで。もうそんなことは気にしないさ。
「そうですね、そうします。」
「そうして下さい。失礼ですが、今着てる服だってヨレヨレじゃないですか。そんなんじゃ人も寄ってこないですよ。それにお客さん、何か顔色悪いですよ。疲れてるんじゃないですか?」
「はぁ・・・最近ちょっと忙しくて。」
「そうなんですか。気をつけてくださいね。たまにはリフレッシュも必要ですよ。」
ふん、知ったようなこと言いやがって。お前は俺がどれだけ辛いか分かってない。去年の受験当日体調を崩して、合格確実だったのに一年浪人しなければならなかった俺の気持ち、お前なんかに分かるわけないんだ。
「・・・そうですねぇ。」
「そうですよ。確かに勉強は忙しいでしょうが、頑張りすぎなんじゃないですか?何か怒ってるように見えますよ。」
・・・ふん、だからどうした?どうせもう同じクラスの奴らからは、煙たがれたり後ろ指さされたりする人間だよ。怒った顔していて何の不都合があるんだ?俺は・・・俺はひとりで上手いことやっていくんだよ!
「はぁ・・・、そうですねぇ・・・。」
「根を詰めすぎだと思いますよ。他の予備校生さんもここにいらっしゃいますけど、友達も多いし楽しくやってるって方がたくさんいますよ。そういう方ほど勉強もはかどるんじゃないですかねぇ?」
・・・うるさいなぁ・・・。俺はこういう人間なんだよ。・・・俺だってもっと人当たりよくしたいさ。でも・・・去年の受験で狂っちまったんだよ。確かに受けた大学は易しいところじゃなかったさ。でも高校の先生からは太鼓判を押され、同級生からも俺は受かって当然と言われていた。一人っ子の俺に対する親からの期待も・・・。そんな俺が落ちた。風邪が原因とはいえ、とにかく落ちた。ショックだった・・・。そして、絶対に次は受かると誓った。全てを投げ打ってでも受かると。
俺だって昔はこんなじゃなかった。でも・・・でも何故こんな俺になっちゃったのか、俺にも分からないんだよ・・・。
「そんな自分から回りを遠ざけるような考え方、ダメですよ。・・・大丈夫ですよ。戻れますよ、簡単に。あなたがこんな風になってしまったのも簡単だったでしょう?それと同じように。」
・・・
「はい、終わりました。お疲れ様でした。ほら、サッパリするとけっこういい男に見えるじゃないですか?これからは身だしなみには気をつけてくださいね。」
最近人と話したことほとんどなかったから分からなかったけど・・・、確かにちょっと変わるべきなのかもしれないなぁ。
「どうも・・・、ありがとうございました。サッパリしました。」
「もうあんなに伸びるまで放っておいちゃダメですよ。またいらしてください。東大受験も頑張ってくださいね。どうもありがとうございました。」
「どうも・・・、それじゃまた。」
俺の顔、怒ってる風に見えるのか・・・。自分がどんな風に見えるかなんて、随分長い間考えたことなかったなぁ。
美容室を出た後、彼は街に出て服を買いに行った。自分で服を買いに行くなんて、どれくらいぶりのことだっただろう。とにかく彼は久しぶりにすがすがしい気分になった。予備校生だとか、この一年で変わってしまったとか、東大を受けるだとかなんて自分では一言も言ってないことも忘れてしまうくらいに。
話すといい気分にしてくれる美容師、
あなたの近くにはいますか?
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12/2
新説・花咲かじいさん
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「ワンワン!」
「なんだい?ポチ。ん?ここを掘るのかい?
・・・こ、これは・・・金銀小判がザックザク!ようやったぞ、ポチ!」
「む〜、こしゃくな、いいおじいさんめ〜。
ポチ、わしにも宝の場所を教えるんじゃ!」
「クゥ〜ン、クゥ〜ン。」
「ん?よしよし、ここだな。
・・・わぁー、出たぞ出たぞ!温泉じゃ、温泉じゃ〜!」
「なにを〜、悪いおじいさんめ〜。
こらポチ!お前もわしの飼い犬なら根性見せぃ!」
「ウゥ〜、ワワン!」
「ここじゃな、ポチ!
・・・こ、これは・・・せ、石油だぁ〜!ようやったぞ、ポチ!」
「む〜、こしゃくな、いいおじいさんめ〜。
おい、ポチ!わしにももう一度宝を・・・」
「こうしておじいさんは大金持ちになりましたとさ。」
「ふーん。」
「これだけ欲深ければ、いつかは人生花咲くということだね。」
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12/9
決戦前夜!
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「明日のテスト勉強した?俺、全然してねぇよ。ヤバいよ。」
「ああ、俺もしてないよ。でも明日のは楽勝なヤツだろ?今日の講義終わってからちょこっとやれば、朝飯前だよ。」
「そうなの?知らんかった。」
「俺、先輩から去年の問題もらってるから、学校終わったら一緒にやろうぜ。」
「悪いな。甘えさせてもらうよ。」
「じゃ、五時に図書館に集合で。」
「なかなか終わらねぇな。」
「そうだな・・・。日頃サボってたツケだな。もうすぐ閉館の時間だ。」
「参ったなぁ・・・。それじゃ、ファミレスに移動して続けるか。」
「そうだな。」
「・・・やっと終わったぁ。ゲッ!もう明るくなってるじゃねぇか!」
「結構手間取ったな。でも何とか終わってよかった。」
「今、何時?」
「7時。テストは9時からか。」
「はぁ。疲れたし、腹減った。何か頼んでいい?」
「おう。俺も何か食ってから学校行くわ。
・・・朝飯前だったな。」
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12/16
殺し屋
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署長「よくぞ足をお運びくださった。私はこの署の署長だ、よろしく。」
殺し屋「・・・」
署長「そうか。殺し屋とは他人の命を狙うがゆえに自らの命も狙われるもの。
利き腕である右手をふさぐ握手などもってのほかだな。
これは失礼した。それではお掛けください。」
殺し屋「・・・」
署長「そうか。殺し屋とは他人の命を狙うがゆえに自らの命も狙われるもの。
背後がガラ空きのその位置に座るなどもってのほかだな。
これは失礼した。それではこちらにお掛けください。」
殺し屋「・・・」
署長「そうか。殺し屋とは他人の命を狙うがゆえに自らの命も狙われるもの。
はじめて来る場所で無駄に時間を浪費するのは避けたいもの。
これは失礼した。早速用件を伝えよう。
新民党の佐東議員がスナイパーに狙われているというタレ込みが入った。
暴力団の活動を規制する法案を阻止するために銀友会が差し向けたようだ。
しかし相手はかなり腕の立つプロの殺し屋。
そこで殺し屋業界では彼と一二を争うあなたに彼を消すことを依頼したい。
さしづめ、毒をもって毒を制すといったところか。」
殺し屋「・・・」
署長「そうだ。あなたの相手はゴルゴ13。実は我々も彼の居場所は突き止めている。」
殺し屋「・・・」
署長「そうだ。あなたの目の前にあるこの単行本の中だ。
我々の必死の捜査で彼を追い詰めることが出来た。
しかし相手は手強い。どうしてもとどめが刺せない。あなたの力が必要だ。」
殺し屋「・・・それでは私がとどめを刺せるように、
こいつをこの本の中から出してもらおう。」
署長「むーっ、あなたには参ったぁー!
ってオイ!とんちじゃないんですよ!
こんなことしてる間にも佐東議員は・・・」
ドタドタドタッ
刑事「大変です、署長!」
署長「コラ!大事な取り込み中だと言っておいただろう!」
刑事「大変なんです、佐東議員が撃たれました!」
署長「何!?ちくしょう・・・ガセだったか!
全員現場へ急行!私もすぐに向かう!」
ドタドタドタッ
殺し屋「・・・なかなかいい答えだと思ったが・・・
・・・ふっ、仕事を一つ逃してしまったぜ。
依頼者の心を撃つことはできなかったようだな・・・」
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