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2004年3月〜



3/2
コックリさん


「「「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたらお越しください。」」」

「・・・動かないねぇ。」
「ねぇ、みっちゃん?ホントにこんな遊びあるの?」
「あるよ!この前、本で読んだもん。」
「えー?でもさっきから何回もやってるけど、何も起らないじゃない!」
「よっちゃん、みっちゃん、二人とも喧嘩しないでよ。」
「だって・・・。」
「じゃあさ、もう一回だけやってみよう。それで最後。
  よっちゃん、それでいい?」
「・・・分かった、いっちゃん。ごめんね、みっちゃん。怒ったりして。」


「「「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたらお越しください。」」」

 は・い

「あっ!すごい、動いた!」
「ね?よっちゃん、すごいでしょ?」
「すごいね、みっちゃん!すごいね!」
「ほら、まだ動き続けてるよ!」

 あ・し・く・じ・い・た・・い・た・い

「足くじいて痛い?」
「ねぇ、みっちゃん?コックリさんは質問に答えてくれるんじゃないの?」
「うん。そのはずなんだけど・・・」

 や・つ・ぱ・り・そ・こ・が・あ・つ・す・ぎ・た

「やっぱり底が厚すぎた?」
「何のことだろ?」
「・・・ポックリさんだ。」
「いっちゃん、何それ?」
「お母さんが若かった頃もね、厚底ブーツが流行ったんだって。
  で、そのころはポックリって言ったんだってさ。」
「へぇ、いっちゃんって物知り!」
「きっとこの人は足くじいたのが元で死んじゃって、
  成仏できずにいるのよ。」
「すごいね!いっちゃん、すごいね!」
「でもさ、あたしたちが呼びたいのはコックリさんだから、
  かわいそうだけど帰ってもらいましょ。」
「そうね、みっちゃん。」


「「「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたらお越しください。」」」

 う・ー・ん・ど・う・で・し・ょ・う

「うーん、どうでしょう?」
「長嶋さん?」
「でも長嶋さんはしぶとく日本代表の監督してるじゃない?
  まだアッチの世界の人じゃないよ?」
「・・・ソックリさんだ。」
「いっちゃん、今度はソックリさん?」
「うん。長嶋さんってアッチの世界でも物真似しやすい人なんだって。
  お母さんが言ってた。」
「すごいね!いっちゃんのお母さんってすごいね!」
「もうっ!あたしたちが呼びたいのはコックリさんだから、
  さっさと帰ってもらいましょ!」
「そんなにイライラしないで、みっちゃん。」


「「「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたらお越しください。」」」

 も・ま・い・ら・も・ち・つ・け

「・・・マッタリさんだ。」
「いっちゃん、モマイラって何?」
「よく分からないけど、私がはしゃぎすぎたとき、
  お母さんはこういう風に注意するよ。」
「すごいね!いっちゃんのお母さんって、なんかすごいね!」
「正確にはマターリさんね。」
「もうっ!イライラする!」
「みっちゃん、落ち着いてよ。
  この人たちも悪気があって出てきてるんじゃないのよ。単なる勘違いよ。」
「もうっ!どうしてアッチの世界にはウッカリさんが多いの!」



3/9
本末転倒テレショップ


「はい!今日も三分間テレショップの時間がやってまいりました!今回も素晴らしい商品をたくさん取り揃えております!」
「アシスタントの太田です。今日はどんな商品が紹介されるのでしょうか、私も楽しみです。」
「まず最初に紹介するのはこちら!大好評のベジタブル・スライサーです!」
「皆様に大好評をいただいております、こちらのベジタブル・スライサーが今日も登場です。こちら、とても素晴らしいんですよね?」
「はい!こちらのキャベツを乗せて軽く滑らせるだけで、千切りがこの通り!さらし玉ねぎや山芋短冊もお手の物!」
「忙しい主婦の強い味方ですね。」
「時間の節約だけでなく、包丁仕事の苦手な奥様にも簡単にプロ並のお料理ができますね!」
「素晴らしいですね。」
「さらに今なら、この最高級の出刃包丁もセットで・・・」
「あれ?ちょっとすみません。包丁の苦手な奥様にご紹介してるんでよね?」
「・・・」
「なんか、本末転倒じゃありません?」

「・・・さぁ!続きましてはこの最新式のデジタルカメラでございます!」
「さぁ、気を取り直して参りましょう。こちらも大好評のデジタルカメラのご紹介です。」
「自慢の高性能!今日のイチ押し!なんと300万画素です!」
「300万画素でこのお値段、大満足ですね。」
「さらに今だけ、今だけこちらの500万画素のカメラをお付けしまして・・・」
「あれ?ちょっとすみません。イチ押しが300万画素ですよね?」
「・・・」
「なんか、イチ押しとおまけが本末転倒じゃありません?」

「・・・さぁ、本日最後の商品です。わが社が自信を持ってご紹介する新商品!」
「出ました、新商品です。皆様、メモのご用意を。」
「昨今は危険な時代でございます!どんな人間があなたを狙っているかわかりません!」
「本当にその通りですね。」
「そこでご紹介するのがこちら!これであなたの個人情報をバッチリお守りします!」
「これは画期的な新商品ですね。」
「こちらはあなたの個人情報を独自の方法で暗号化して、もし万が一あなたの知らないところで個人情報が漏洩しても安心、という商品でございます!」
「最近は大企業でもそのような問題が多いですものねぇ。」
「まぁ、本当は皆様の個人情報を管理する企業の方が気をつければすむ話なんで、本末転倒なわけですが、この商品はそんな万が一の場合にもあなたの安全をお守りいたします!」
「タカタ社長、どうもありがとうございました。本日ご紹介した商品のお申し込みは、こちらの番号まで。」

♪北の町から南の町まで あなたの情報もらします♪
♪心休まるゆとりの生活 電話一本おびやかす♪



3/16
地球は私が回してる


「前田孝之、ノーベル賞受賞・・・。こういう頭の切れるヤツは、ぜひともそばに置いておきたいな。内藤恭子、ミス日本代表・・・。この女、いい女だな。ムフフ、ぜひ隣に置いておきたいものだ。野田友和、大学一年生・・・。こいつは肩書き的には大したことないが、いいヤツのようだな。こういう男も欲しいな。」
「ご主人様。またその資料とにらめっこですか?」
「ああ、そうだ。一般庶民の中にも面白そうなヤツはたくさんいるからな。また一人、良さそうなヤツを見つけたぞ。野田友和、こいつだ。」
「・・・大学生ですか?これといってご主人様のお役に立ちそうに思いませんが?」
「友人の間ではとてもいいヤツと評判のようではないか。このような地位につくと毎日が暇で暇でしょうがなくてな、話相手も欲しくなるわけだ。それではいつもの通り、この男を連れて来てくれ。明日までだ。」
「・・・その、ご主人様にたて突くわけではないのですが、最近やりすぎではないですか?」
「何だと?」
「確かに有能な人材を近くに置いておきたいというご主人様の考えもよく分かりますが、最近は度が過ぎます。調査によりますと、ご主人様の仕業ではないかと下々の者たちも感づき始めているようであります。そろそろお控えになってはいかがでしょうか?それに・・・」
「それに?」
「さらってくる私たちのことも考えてください。泣き叫ぶ人間をさらってくるのはとても気が滅入るもので」
「うるさい!!私に口答えするなんて分不相応なことをしおって!!その気になれば、お前を消すことだって簡単にできるのだぞ!!分かったら早速仕事にかかれ!!」
「・・・かしこまりました。」



「どうだった?」
「ダメだ。ご主人様、聞く耳持たずだ。」
「そうか・・・。また新しい仕事か?」
「ああ、今度は大学生だとさ。」
「辛いなぁ。まだ若いのに。」
「俺たち天使の仕事も楽じゃないな。」







 ・・・この度は息子、野田友和の葬儀に来ていただきありがとうございます。息子もこんなにたくさんの人に来ていただいて、すごく喜んでいると思います。父親の私が言うのもなんですが、友和はとてもやさしい、いい息子でありました。いいヤツだったから、神様が少しだけ早く、近くに召されたのだと思います。でも・・・、こんなに早くに・・・、私は神が憎いっ!!



3/23
ドミノ


A席「すみません。席倒していいですか?」
B席「ああ、いいですよ。」

ギギギッ

B席「前が倒れてキツくなったな・・・すいません、席倒していいです?」
C席「ええ、どうぞ」

ギギギッ

C席「はぁ、俺も少し倒そうかな・・・すいません、席倒していいですかね?」
D席「いいっすよ、どうぞどうぞ。」

ギギギッ

D席「ふぅ、じゃ俺も一眠りするかな・・・すんません、席倒してもいいっすか?」
E席「どうぞどうぞ・・・」
  ・
  ・
  ・












  ・
  ・
  ・
Z席「すみませんが、席倒してもよろしいですか?」
A席「ああ、いいですよ。」


 


4/6
年度はじめですが、年度末のある日の日記から


三月 年度末 この国では多くの工事現場が発生する
道路の僅かな歪みを直す 路面の少々の凹凸を直す
高性能に進化した乗用車にとってそれほど重要ではない労働が
その年度の予算を使い切るためだけに行われる
それを全て使い切ってしまわないと来年度の分が下りないのである
多くの人はこの無用な工事を「穴掘り」と呼んで揶揄するが
地方のお役人さんはあまり悪くはない 政府とシステムが悪いのだ
そのシステムのために無駄な金が 労力が浪費されていくのだ

第二次大戦中のドイツはたくさんの捕虜を抱えていた
はじめの頃は彼らに強制労働をさせていたが
次第に捕虜の数が増えてくると仕事の量が足りなくなり
暇を持て余す者が出てくるようになった
これは捕虜を支配するドイツ側からすると好ましくない
捕虜たちに反逆のための気力や体力を残してしまうことになるから
このような理由でドイツ軍は手の空いた捕虜たちに
ひたすら穴を掘るという仕事を強いたらしい
そして穴がある程度深くなってくると
今度はその穴を埋めるよう命令したのだ
こうして当時のナチスドイツは捕虜たちの反動を
無意味な労働を強制することで押さえつけていたのだ

今そんなことを考えながら 渋滞にはまっている
でも本当に憎むべきものは 何台も連なっている車列の先にあるので
僕の手は 声は絶対に届くことはない
僕はもう味のしなくなった眠気覚ましのガムを
クチャクチャと噛み続けるしかないのだ



4/13
幻肢


幻肢・・・交通事故などによって手足を切断した人が、その手足があたかもまだ存在しているように感じること。人によっては無くなった部位にかゆみがあるように感じたり、電気が走るような痛みを覚えたりすることもある。脳がその部位があった頃を記憶していて、何らかの活動をすることにより起こると考えられている。



 ガチャ!

「部長、お久しぶりです!お見舞いに来ました!」
「おお、原田か。すまんね、わざわざ見舞いになんて来てもらって。」
「とんでもない。部長が交通事故に遭ったって聞いて、みんな心配していましたよ。一時はどうなることかと思いましたが、ここまで回復して僕らも安心しました。」
「ははは。そう簡単には死ねないからな。・・・まぁこの通り、左足は失ってしまったが。」
「・・・はい。お気の毒なことです・・・。でも今日会ってみて、少しホッとしましたよ。部長が思ったより気落ちしてないようで。」
「まぁ最初は少し落ち込んだがな。でも私にも養っていかなきゃいけない家族がいるしな、いつまでも後ろ向きな考えをしていてはいけないと思ったんだよ。」
「なるほど。いつも明るい部長らしいですね。」
「それにな、原田。私はこの左足が、実は今でもあるんじゃないかと考えるんだよ。」
「・・・どういうことですか?」
「時々左足の辺りがかゆく感じることがあるんだ。もう左足なんて無いのにだぞ?『幻肢』って言うらしいんだがな。」
「へぇ、そんなことがあるんですか。」
「今それを治すために、リハビリみたいなことをしてるんだけどな。でもお医者さんからすれば治すべき病気でも、私にとっては心強く思えることがあってな。」
「というと?」
「かゆみがくる度にこんな風に考えるんだ。この左足は無いように見えるが、実はあるんじゃないかと。そうすると私は別に何も失ってはいない、今までと同じように頑張れるはずだと思えて、なんか元気が出て来るんだよ。」
「無いものがあたかも有るように見えるわけですね?」
「まぁそんなところだ。実は昨日専務が見舞いに来てくれてな、病状が安定したらまた雇ってくれるそうだ。これからもお前たちと働けるぞ。」
「ホントですか!?それはよかったです!!」
「有難いことだよ。もうすぐ二人目の子供も生まれるから仕事も頑張らないとな。本当は明日にでも復帰したいところだが、こればかりはお医者さんの許可が出ないとな。」
「そうですね。ゆっくり治して退院して下さい。僕たちも部長の復帰を待ってますから。」
「私が戻るまで頼んだよ、原田君!」
「分かりました。みんなにも伝えておきます。それでは部長、今日は帰ります。」
「そうか。今日はありがとう。それじゃ入り口のところまで送ろう。」

 ガタンッ!!

「部長ッ、大丈夫ですか!?ダメですよ、立ち上がろうとしたら。」
「ははは、そうだったな。ついつい、無いものがあたかも有るように見えてな。」






「なぁ、原田。昨日部長の見舞いに行ってきたんだろ?」
「・・・ああ。」
「気の毒だよな。部長に非はないのにあんな事故に巻き込まれて。」
「・・・元気そうにはしてたけどな。」
「部長は左足切断、助手席の奥さんは即死だろ?悲惨だよな。」
「・・・そうだな。」
「ショックも大きいだろうな。俺なんかとても見舞いになんて行けないよ。」
「・・・。」
「いい部長だったから、早く元気になって欲しいけどな・・・。それじゃ俺、先に帰るわ。お先に!」


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春うらら






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