Short-Short-Short


第六回雑文祭参加作品
三年たったらバロンドール


「俺さ、ワールドカップに出ようと思うんだ。」
「・・・はぁ?」
「やっぱ世界中が注目するイベントだろ?
 その注目を浴びたいわけだよ。」
「・・・まぁ俺も暇だから、聞いてあげようじゃないか。」
「大観衆の中ピッチに立つ俺、光る億千万のフラッシュ・・・」
「億千万!?・・・まぁいいや、案外目立ちたがりなのね?」
「というよりも適度な緊張感を味わいたいっていうのが本当かな。」
「ほうほう。」
「もう心臓がドキドキしまくって、口から飛び出す位の緊張感。」
「いっそのことそのまま死んでしまえ。」
「やっぱそういうのがないと生きてる実感、感じられないだろ?」
「別に。・・・っていうか三年しかないぞ。どうするつもりだ?」
「実はすでに高名なコーチにオファーを出してる。」
「ほう、君一人だけを鍛えるためにね?で、誰よ?」
「フローラン・ダバディ。」
「あの人はトルシエの通訳だった人だね。
 目立ってたから間違っちゃったんだ?」
「昨日『あの人は今』を見て、この人だってピンと来た。」
「あらあら、最近見ないと思ったら。」
「そしてもう一人強力な助っ人が!」
「もう一つオファー出したのね?誰よ?」
「ドラえもん。」
「病院連れて行ってやろうか?」
「いや、お前もドラえもんはいると信じているはずだ。
 内心そうだと思い込んでいたはずだ。」
「一人で行けないなら、俺が付き添ってやるぞ。」
「そしてドラえもんから空気砲を借りてだな、
 並居る日本代表候補を次々と殺害するわけだ。」
「もっといい方法、あると思うよー。」
「まずはとりあえず大吾郎カットのあいつだ。」
「ロナウドは多分ブラジル代表で出るよ。」
「とにかく俺はあのきらびやかな舞台を踏むのである。」
「無理だね。妄想は止めなさい。」
「金ならある。」
「そういう問題じゃない。」
「サッカーボールくらい買える。」
「少なっ!」
「すでに練習は始めている。応援してくれよ。」
「はぁ・・・。」
「お前は俺が思いつきで言ってると思ってるだろ?」
「当たり前だ。」
「実はこの野望は昔から温めてきたものなのだ。」
「ふーん、いつから?」
「1996年、アトランタオリンピック。」
「ああ、ブラジルやっつけたやつね?」
「それ以来、マイアミの奇跡をもう一度と頑張っているのだ。」
「はいはい。」
「もう一つある。1997年。」
「ああ、フランス大会予選ね?」
「それ以来、ドーハの悲劇をもう一度と頑張ってるのだ。」
「予選敗退じゃん!っていうか、それアメリカ大会予選。」
「ま、応援してくれよ。三年後の勇姿を期待していてくれ。」
「・・・疲れた。」
「とにかく、俺はあと三年でライバルを次々と蹴落とす!
 ・・・サッカーだけにね。」
「日本代表の足を引っ張らないようにしてくれよ。」

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第六回雑文祭





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